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ナチュラルチーズ製造技術マニュアル
財団法人 蔵王酪農センター
ナチュラルチーズ作りQ&A
[目次]
Question12 Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 Q11 Q12 Q13

販売後のチーズにカビが出ます。予め調べられますか?

Answer
冷蔵でも増殖するカビ

微生物の生育条件には、水分、養分、酸素の有無、温度、pHなど様々な要因がありますが、一般にカビは細菌より強靭で、チーズで問題となりやすいペニシリウムやアスペルギリウスは水分活性0.8〜0.85(細菌は0.9以上)で生育でき、 生育適温は20〜25℃(細菌は30〜33℃)で最低生育温度は0〜8℃。冷蔵でも増殖する点に注意しなければなりません。

急速な拡散に注意

カビには脂質や蛋白質を分解して独特の風味をもたらす有用なものもありますが、一般的には、カビ集落の発生した食品は商品価値が著しく損なわれます。チーズの熟成、流通過程では青、黒、緑色の集落発生例が多く、いったん集落が発生すると多量の胞子が飛散して急激に汚染が進行します。
その原因の第一は、原料生乳の9割に1ミリリットル当たり100個以上のカビ胞子が存在することで、原料生乳の適確な処理をはじめ、製造施設および機器のカビ防除、二次汚染の防止、熟成中の管理、流通条件などに配慮が求められます。

カビ試験で出荷の可否判定を

集落の形状と数でカビ数を測定する次の試験法が国際的に広く採用されています。

●チーズのカビ試験
1. 希釈水の調製
リン酸2水素カリウム20gを温水に溶解し、 水を加えて1リットルとしpH7.5に調整、 滅菌する
2. 選択培地の調製

市販の酵母エキス・ブドウ糖寒天培地を指示通り溶解、 滅菌しpH6.6に調整。 使用直前に温度45℃に保持し培地1ミリリットル当たり100µgのクロラムフェニコールまたはオキシテトラサイクリン塩酸塩0.1%溶液を培地100ミリリットルに対して10ミリリットル添加し、 混合する

3. 試料の採取
集落の発生している外皮部分などを除き、100〜200g程度採取する
4. 試料希釈液の調製
1.の希釈液90ミリリットルを滅菌したプラスチック袋にとり、 試料10gを加え、 ストマッカーを用いて温度40℃以下で混合、分散させ10倍希釈液とする 必要に応じ、10倍希釈液1ミリリットルを希釈液9ミリリットルに加えて滅菌ピペットで5〜10秒間、10回以上吸引放出を繰り返し混合して10-2倍希釈液を調製、 同様の手順で10-3、10-4・・・倍希釈液とする
5. 平板の作成
段階別の希釈液各々1ミリリットルをペトリ皿にとり、温度45℃の調製済み選択培地15ミリリットルを加えて混釈する
6. 培養
温度25+-1℃で5日間培養する
7. 判定
段階別に集落数が10〜150の範囲の典型的な集落数を計測する
8. 結果の表示
次の式で計算し、上位2桁を1g当たりの有効数値とする
カビ数=(計測した集落数の総計/最初の希釈平板の集落数+0.1)*希釈率
集落の判定が困難な場合は、10個以下でも希釈段階の高位の計測数を採用し、150個以上の集落しか得られない場合は150に近い集落数の計測値に最高希釈率の逆数を乗じて表示する

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